第62回建築士会全国大会「北海道大会」が9月21日(土)に函館アリ−ナで開催され、
女性委員会から4名が参加した。
交流セッションの女性委員会セッション「和の空間の魅力を探る・・・ふたたび」に参加したのでご報告したい。
連合会女性委員会では、平成28年度から日本の住まい「和の空間」をテーマに取り組み、
全国各地で公開されている魅力的な和の空間、
これからの居住環境への示唆に富んでいるものを紹介する
「魅力ある和の空間ガイドブックWEB版」を制作し、
和の空間や和の要素を改めて捉え直し、
今後の設計活動、居住環境づくりに活かしてもらいたいという目的である。
今回のセッションは、ガイドブックに掲載された和の空間の魅力の紹介とパネルディスカッションである。
はじめに北海道、青森、福岡、広島の女性委員会が選んだ和の空間が紹介された。
北海道は、函館市内に建つ和洋折衷の豪商の私邸である旧相馬邸の詳細な説明であった。
青森県は太宰治記念館斜陽館、高橋家住宅、田中家住宅、新むつ旅館を、
和の空間が継承される過程で女性が果たした役割など、
女性の視点で和の空間を読み解く内容であった。
福岡県は和の空間が非日常になりつつある視点から、
贅を尽くした華やかな和の空間を持つ、炭鉱王の邸宅であった旧伊藤伝右衛門邸、
旧伯爵家の旧柳川藩主立花邸の魅力を紹介。
広島県は県内にある建物の魅力を発掘・発信する「ひろしまたてものがたり」100セレクションに選定されている太田家住宅、耕三寺潮聲閣、恋しき(料理旅館)の紹介であった。
パネルディスカッションでは、和の空間の魅力、活用、波及について意見交換された。
和の空間の魅力では、庭・土間・縁側・和室等の空間の流動性、
不要なものが削ぎ落されたシンプルなデザイン、
繊細なディテールなどが挙げられた。
和の空間の活用では、事例として地域教育の場として活用し、
体験が子どもや地域の人々の記憶に残り心に響くことで、
その空間のファンになって繋がっていき、
建物が保存活用されていくことなどが挙げられた。
和の空間の波及では、ガイドブックの制作で各県女性委員会が調査取材したことにより、
建物の歴史的背景や文化的な要素、所有者の思いなど様々なことが分かり気づきもあり、
和の空間を深く理解する貴重な機会となった。
女性委員会で見学会を開催し、これを機に所有者との交流が始まったとの報告もあった。
魅力ある和の空間が活用され見学者が増えることで、
その周辺がきれいになっていき、まち並みにも良い影響を与えていることも挙げられた。
セッションに参加して、全国の女性委員会がこの事業に取り組むことで和の空間をあらためて考える機会になり、
「和」について興味を持つ女性建築士が増え、
スローペースではあるが波及効果が出始めていることを実感した。
和の空間が減り続ける中、一筋の光明として期待できるセッションであった。