2017年05月13日

第26回わたしらしい住まいづくり セミナー「縮退社会における建築再生と不動産コミュニティ」報告 大坪 一子

女性建築士が主催する「わたしらしい住まいづくり展」も今年で26回目を迎えました。219日(日)、名古屋都市センターまちづくり広場ホールで、セミナー講師に田村誠邦氏をお迎えし、「不動産についてもっと識ることで拡がる新たな可能性」についてご講演いただきました。参加者78名(+飛入りの女子中学生1名)で、2時間を超えるお話は、先生からの問いかけに、自分なりの回答を考える機会となりました。

 昨今の天候のように、今日に適した服装が翌日には的外れとなって困るように、環境はつねに変化しています。建築業界でも自然災害、政治、ビジネスの流れの中で要求されることが変わってきています。

 日本の新築着工数は、2015年には909千戸で、先進国の中でもこの数値は、2005年米国バブル期よりもかなり高い数値です。日本の場合、人口千人当たり7.15戸、対する米国は6.98戸です。さらに中古住宅の流通量においては、日本は1.35/千人、米国は21.6/千人という調査結果から、新築物件を多く建てているが、やがて中古になっても活用されず、果ては空き家として残り続けていく現状を示唆しているものだそうです。そこで田村氏は「建築と不動産を融合した新しい業種」の必要性を述べられました。建物は完成したら不動産になります。不動産の知識がないと、既存の建物をうまく活用できないということです。

 次に、「不動産オーナーの本当のニーズを知っていますか?」との問いかけ。空き家率は賃貸物件やその他の住宅で増加しており、その他の住宅とは、ご両親が亡くなったり、施設に入るなどで空き家となるケ−スだそうです。全国的にはその他の住宅が増加しており、東京では賃貸物件の空き家が増加しているとのことです。そんな空き家や土地などの不動産を所有するオーナーの要望は、所有財産を維持できる収入希望や次世代に資産を伝えたい、土地活用による収益や税金を安くしたい、面倒なので現状のままでいいなど様々です。実際には本当のニーズに気づいていないお客様が多く、彼らの悩み解消や想いをかなえてあげるため、自分自身の売り、得意としていることでサ−ビスを提供することが大事だそうです。

 その時に大切なことは「コミュニケ−ション能力」です。仕事はお客様のニ−ズを把握することから始まります。まずは相手をまるごと理解する気持ちで接する大切さをお話くださいました。話すこと説得することより、まずじっくり聴く姿勢であったり、一瞬一瞬を大切にして応対する重要性を教えていただきました。

 講演後半は、ご自身のお仕事や事例をもとに、お客様の知りたい専門知識の一部をご紹介くださいました。たとえば、@リニュ−アルか建替えか A環境保全しながら相続対策(深沢プロジェクト) B老朽化した擁壁の再建資金がなかった神社(小石川の杜プロジェクト) C築80年のRC造建造物を活用して土地を売らず、自己資金、借入金なしに安定した収入を必要とした法人(求道学舎の再生)、などです。

 普段の仕事でもコミュニケーションの大切さを自覚し、実践してきておりますが、ますます大切だという確信が持てました。また、相手と話す時は「相手のわかる言葉で話す」ことも重要であるということ。そして基礎知識を徹底することを再認識できました。これからの高齢化社会に対応するヒントをもらえたように思います。

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●会場の 名古屋都市センター まちづくり広場 


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平成28年度女性委員会 バス見学研修会報告   甲村伊津己

 昨年の123日、富山・金沢「カフェクレオン・富山ガラス美術館キラリ・シェア金沢」に行きました。冬の北陸路はどんな防寒対策が必要かと心配をしましたが、皆さんの日頃の善い行いのおかげで、とても暖かい最高の見学研修会日和となりました。

 「カフェクレオン」は富山市舞台芸術パーク内に建つ隈研吾氏設計のカフェです。まずは美味しいハン

バーグランチを頂き、お腹を満たしたあと見学会スタートです。広い敷地の中で、高さを抑えた緩勾配の薄い緑化された大屋根と、それを支えるために積み上げられた角材で、森のような建築をつくりたいと考えたそうです。解体・移動時にはリサイクル可能な素材を使う配慮もありました。

 「富山市ガラス美術館」は「TOYAMAキラリ」という、図書館・美術館・銀行・店舗等の複合施設の中にあり、隈研吾氏が設計に携わった御影石やガラス、アルミなどの異素材を外観に使用した個性的な建物です。美術館には現代ガラス美術の巨匠デイル・チフーリ氏による空間芸術の展示がありました。圧巻は、多くの羽板を活かした2Fから最上階の6Fまで続く斜め螺旋形の吹き抜けです。最上階や各階の窓から降り注ぐ外光を感じながらの市民の営みが、とても眩しく羨ましく思えました。

 最後に訪れたのが「シェア金沢」です。心配事はここに至るまでに、集合写真撮影をしていないことです。

さてこの街は、老いも若きも障害も健常も分け隔てなく「ごちゃ混ぜ」で触れ合いながら、積極的に街づくりに参加するという暮らし方で「温泉」というツールを中心に、住人、地域の利用者、一般客のコミュニケーションが図られていました。説明の中で「施設の都合ではなく、住人それぞれの個性や経験を活かすことを大切にしています」。この言葉に、とても感銘を受けました。少し辺りが暗くなった頃、集合写真も撮り終えて見学研修会は終了を迎えました。

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●カフェクレオン 設計 : 隈研吾

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TOYAMAキラリ 設計 : 隈研吾


●シェア金沢 設計 : 五井建築研究所




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防災セミナー2016「避難所での女性への配慮〜建築士が避難所でリーダーシップを取るために」に参加して 梅田知奈

 201611月7日(月)に、防災セミナーが開催されました。今年は名古屋大学減災連携研究センター特任准教授で、防災危機管理・防災教育・被災者支援などを専門にされている阪本真由美先生をお招きし、「避難所での女性への配慮〜建築士が避難所でリーダーシップを取るために」というテーマで講演をしていただきました。過去の災害を振り返りながら、避難所の実態や現状、そして今後の課題などについてお話しされました。

 災害における人的被害は、大きく2つに分けられます。地震によって崩れた建物に潰されるなどの「直接死」と、災害に起因する負傷の悪化などにより亡くなる「災害関連死」です。実は過去に起こった災害で亡くなられた方の何割かは、災害関連死により亡くなられています。熊本地震では直接死より災害関連死の方が多く、その中でも最も多い原因が、避難所における生活の肉体・精神的疲労によるものだそうです。建物の耐震化などで命を守るのはもちろんのこと、せっかく守られた命が避難所の環境が悪いことで失われてしまうようなことはあってはならないことです。

 災害が起こった直後は、動線や空間の確保などがうまくできないために避難所が無法地帯状態になってしまったり、トイレなどの衛生管理がうまくいかなかったり、避難所そのものの運営・管理がうまくいかない場合も多くあるそうです。うまく運営されていない場所は、利用しづらくなってしまいます。

 また、さまざまな人が避難所運営に携わっていなければ、少数者や弱者の声が無視されがちです。地域防災においても、日頃から女性の参画状況が大変遅れています。そういった状況が、災害時にはより顕著に現れてしまっていることを、阪本先生は実際に目で見て強く感じられたとのことでした。熊本の避難所でも、うまく運営されていた所はやはり、女性の声をきちんと拾っていたところだったそうです。障がい者や外国人なども含め、より多様な声が避難所運営に活かされることが、一人でも多くの命を救うために必要なことだと改めて強く感じました。

 今回の防災セミナーは、今後どういった形で防災の活動を進めていくべきかを深く考えさせられる、大変有意義で貴重な時間となりました。私たち女性建築士だからこそできることを、災害が起こってからではなく、災害が起こってしまう前にしていきたい、必ずしなければならないと強い意気込みを感じるセミナーとなりました。

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平成28年度第59回建築士会全国大会(大分大会)  畑中ひと美

平成281022日、大分県の別府国際コンベンションセンター・ビーコンプラザにて小雨の中、建築士会全国大会大分大会が開催されました。

 4月に発生した熊本県・大分県を震源とする地震では、由布市・別府市で大きな被害が出ています。

 大分建築士会会長の挨拶では「一時期は開催を危ぶんだが、安全・安心な建築に携わる建築士の気概を示す場として、また被災地支援のためにも」と説明され、この日の大分大会無事開催に及んだそうです。

セッションは女性委員会の「和室についての報告」に参加しました。26回全国女性建築士連絡協議会からの連続テーマです。減少していく和室について、全国のアンケート結果・伝統的な和室・今後の和室について発表され、あらためて和室に対し考える機会となりました。

 記念講演は、本格焼酎「いいちこ」のアートディレクター河北秀也氏が「いいちこ」のコマーシャルを『引受けるにあたっての迷い』から『今日のコマーシャル』に至るまでを、当初ポスターから現在のTVコマーシャルまで、視覚と同時進行のプレゼン形式でお話しされました。

 どこかで自然に馴染んでいたCMが知らぬ間に身近な存在となっていた力には感銘し、建築に携わる者として、「何気ない中に、五感を通して心地よさを感じる」建物づくりができたらと、痛感しました。

 大会翌日は、天井と壁に木構造を採用した大分県立美術館「OPAM」、切妻で八幡造様式の建物の「宇佐神宮」、宝形造りの美しい大堂の「富貴寺」を見学し、約1300年前からの木造建築とこれからの木造建築の歴史と可能性を感じました。

 2日間の大分大会は「安心して過ごせる場」「心に響く建築」の大切さを改めて認識した、とても有意義な全国大会でした。

 最後に、今大会前日被災の鳥取県・熊本地震の被災地大分県の皆様には1日も早い復旧となりますようお祈り申し上げます。
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●会場の別府国際コンベンションセンターにて集合写真  ●女性委員会「和室についての報告」
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●大分県立美術館 設計 : 坂茂                                ●八幡宮総本社 宇佐神宮

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(自由報告) 介護現場から思うこと  竹中美智子

私は4年前に建築士と社会福祉士として、福祉用具貸与事業所と建築士事務所を立ち上げました。主な仕事は、介護保険で定められた福祉用具貸与(特殊寝台や車いすなどの13品目)、と、特定福祉用具販売(ポータブルトイレや入浴補助用具などの5品目)、防水シーツや靴などの福祉用具販売、住宅改修(手すりの取付や段差解消などの7項目)です。ケアマネージャーがいる居宅介護支援事業所から要支援者や要介護者を紹介してもらい、レンタルや販売、住宅改修を行っています。

 現在は、介護保険や医療保険の充実により、疾病を負っても在宅での生活が続けられる環境が整いつつあるため、在宅の高齢者は増加傾向にあります。内閣府の調査によると、自宅で最期を迎えたい高齢者は半数を超えています(高齢者の健康に関する意識調査 内閣府H24)。同様に自宅で介護を受けたい人も、男性で42.2%、女性で30.2%と日常生活を送る上で介護が必要になった場合にも在宅生活を続けたい人が多くなっています。

 脳梗塞などの突然の疾病により入院し、急性期が終わると、本格的なリハビリが行われ、退院の目途が立った時点で、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などと自宅の改造提案(退院前カンファレンス)が行われます。自宅に手すりを付けたり、段差解消をしたり、就寝場所の変更をしたりすることで、要介護の状態である人の在宅生活が安全安心に続けられるための提案です。

 私は、福祉用具屋として、また住宅改修の施工業者としてその場に呼ばれ、PTOT、ケアマネとともに様々な意見交換をします。例えばPTが提案したいトイレの手すりの位置には、胴縁がないから手すりはつかないとか、この壁は扉に変更できるとか、建築士だからこそわかる構造上の問題が、その場で解決できることを重宝がられます。動線を考慮した手すりを提案したり、梁のちり分を計算し前出を大きく調整した階段手すりとしたり、玄関框の踏み面と蹴上げを計算し適切な段差解消をしたりするなどの細かな心遣いが、従来の住宅改修にはない良いものができると、利用者やケアマネ等に喜ばれています。

 最近は、建具の建付けが悪くなったことやドアノブの交換などの小さなことから、来客時に玄関ドアを開けに行けない悩みや、トイレを寝室近くにつくりたいとのレイアウト変更など、様々な相談を利用者やケアマネから受けるようになりました。

 介護や医療のエキスパートと、建築のエキスパートが利用者にチームアプローチを行うことにより、利用者の安全安心な環境整備だけではなく、ケアマネやPTOTの仕事効率の向上にも役立っていると思っています。

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