2021年04月14日

【活動報告】第30回わたしらしい住まいづくりを終えて                 下村 明子

30年の節目を迎えた「わたしらしい住まいづくり」は、計画段階から新型コロナウイルス感染症に見舞われたものの、
「女性建築士の作品展」と「30回記念セミナー」は滞りなく開催することができた。
一方、作品展会場での「無料相談会」と「住まいの絵本読み聞かせ&ワークショップ」は
対面で接することが避けられないために開催を見送った。

 「女性建築士の作品展(1/13〜1/31:名古屋都市センター)」は、少人数で設営作業ができるよう、
例年通りの吊下げ展示ではなく置き型の展示とした。
また、作品提出方法については、メールによるデータ送信を主としたことにより、
提出のために会場へ足を運ぶ人数を減らしたとともに、事前に作品データが集まるメリットを活かして、
設営日までに作品のジャンル別分類と展示レイアウトを充分に整理することができた。
作品展テーマの「リノベーション」をさらに小分類し
(フルリノベ・部分リノベ・耐震リノベ・外まわりリノベ)、
その他に新築、パースなどの提案事例や女性建築士の活動紹介を含め計32作品が集まった。
会期中は延べ397名の来場者があり、
「分類別に整理されており見やすかった。」
「住みたいと思える家があった。」等の感想をいただいた。

  パネル展会場.jpg リノベパネル2.jpg

 「30回記念セミナー(1/31:オンライン)」は、社会学者の上野千鶴子氏より「3.11&コロナ後の建築」をテーマに講演をいただいた。
上野先生.jpg 3.11後の災害復興住宅計画の際、建築家がアドバイザーとして現地入りし、
 住棟配置やコモンの確保に知恵と工夫を凝らしたことで
 地域のコミュニティ形成がうまくなされた事例がある反面、
 ある県営住宅の事例では、建築家が想定したコモンからではなく、
 実際には生活スタイルが似通った住民同士によってコミュニティが
 形成されていたことが上野氏らの現地調査により判明した。
 また、コロナ後の建築については、
1951年に公団住宅の51C型で提唱されたnLDK(nは家族人数-1の個室数)方式を挙げ、
夫婦と子どもから成る核家族の場合、nの数から引かれるのは多くの場合は母親で、
家庭内でプライバシーの確保がしにくいことに気付かされた。
最近では、在宅ワーク時に夫婦室を優先的に使うのは夫であり、
妻は都度空いている場所を探して仕事をするという話も聞く。
現在多種多様な世帯構成があるにも関わらず、依然としてnLDK方式は続いているが、
昨今では単身者や一人親世帯が集まってnLDK方式の建物を利用するシェアハウスやグループホームがある。
結婚を機に出て行ったが、離婚して子どもを連れて戻ってくることもあり、
それはまるで実家のようである。
偶然居合わせた血縁関係のない他人同士が互いに助け合い生活する様子を、
上野氏は「家族をひらく」と表現した。
セミナーには建築関係者だけでなく様々な職種の方々が全国各地より集まり、
参加者数は当初の定員枠を超える136名となった。
終了後110名分のアンケートが回収されたが、そのうちの約85%が女性からの回答であり、
女性学やジェンダー論を専門とする上野氏への関心の高さが伺えた。

セミナー集合写真.jpg

 最後に、30回の特別企画として3月に記念冊子を発行し、女性会員の方々への発送を終えた。
全30回の開催概要に社会情勢を併記した年表を、
過去のデータ収集からデザインに至るまで担当女性委員が思いを込めて作り上げた。
多くの方々にご覧頂けると幸いである。
  
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2021年03月30日

令和2年度講習会2「空き家対策講習会」の報告 佐藤百世

 女性委員会の令和2年度講習会は空き家対策がテーマです。

9月に不動産事業も手掛けている委員を講師として、
現状や制度についての勉強会をしました。
第2弾となる今回は(株)住宅相談センター代表取締役であり、
お客様側に立った住宅・不動産のアドバイスを行っている吉田貴彦氏を
講師にお迎えし、12月4日に開催しました。

 新型コロナ感染防止を考えてオンラインのみでの開催としましたが、
24名の方にご参加いただき、県外の建築士会会員の方もいらっしゃいました。

 そもそもなぜ空き家が増えているのか、この問いに多くの人が
「人口が減少しているから」
と答えるそうですが、それは
間違いだそうです。
人口が減りだした頃はまだ空き家は増加しておらず、
「高齢化+単世帯の増加」が空き家を増やしているとのことです。

 子供が結婚して新しい世帯ができた時、親と同居するという選択をする人はごくわずかです。
そうなると当然高齢者となった親だけが住むことになり、
その後施設に入所したり亡くなれば空き家になります。
子供が近くに住んでいればまだ空き家の状況を目にするので、
手入れをしたり対策を講じたりする確率も高いですが、
遠方に住んでいる場合、多くはほったらかしの空き家になります。
家を継ぐという価値観が薄くなり、自分たちの住みたいところに住む、
という価値観が一般的になったことが空き家を増やしているように思います。

 高齢者の単世帯というのが空き家予備軍なのですが、
名古屋市中村区、千種区がその空き家予備軍が多いそうです。
都会なので意外ですが、高齢者が多いと聞いてなるほどと思いました。
古くから人が多く住むところは高齢者が多くなります。
これはどの地域でも同じなのではないでしょうか。

 空き家が増えたとしてもそれが活用されればいいのですが、
活用されるに至るまでに解決しなければならない問題が様々あります。

「相続未登記、所有者が認知症で行為能力なし、共有者の意見の不一致、所有者不明、遠隔地所有者」

 これらの問題が圧倒的に多く、「どう活用するか」という段階にあがるまでに
いくつものハードルを越えなければなりません。
建築士の出番となるのはおそらく「どう活用するか」の段階で、
リノベーション事例が増えたといっても、それでは空き家問題の解決にはなりません。
建築士としては出番がないようでもどかしさを感じますが。
住宅に関わる者としてどこへいけば相談できるか、
解決する方法はどういうものがあるか、
情報発信することによって空き家を相続する人への注意喚起になるのではと思います。

 私は住宅の新築が主な仕事なのですが、空き家が増えているという社会にあって新築を増やしていることに心の片隅で疑問を感じることもあります。
建築士として長持ちする住宅をつくっても、
住人が「長持ち」しないというのが今の社会です。
質のいい住宅をつくる、それが世代を超えて流通する、
そういう社会になるには長い道のりだなと思うと同時に、
自分自身の実家を将来どうするかということを考えなければと実感しています。

2020-12-04.jpg


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2021年03月01日

防災セミナー2020「過去の災禍に学ぶ〜災害と感染症の深い関わりを学ぶ〜 池田 園子

 10月28日、名古屋大学減災連携研究センター長の福和伸夫氏による、
ZOOMウェビナーを使ったオンラインセミナーを開催しました。
女性委員会が防災セミナーを開催するようになって今回で10回目。
節目の回に、第1回目にお話頂いた福和先生に再度お願いしようという事になりました。
29名の参加がありましたが、オンラインという事で、東京や高知からの参加もありました。

「10月28日は何の日?」
まずは、こんな問いかけから。

答えは「濃尾地震が発生した日」なのですが、即答できなかった私たちはお叱りを頂くという、
いつもの福和節のトークで始まりました。
 過去を振り返ってみると、疫病と災害がほぼ同時期に発生していること。
それは偶然ではないと感じる点も多く、また、政治がそれらを転換にして大きく動いてきたことも先生の説明からよくわかりました。

 また、25年前の阪神淡路大震災の時と今と大きく違うのは国力の低下が進んでいるという点。
世間が誤解している防災についての常識について、過去の資料・データにて説明して頂き、
危機感を感じる時間となりました。
 なぜ誤解されたままの常識が蔓延しているのか?
それは、経済優先志向、個人的営利によって流されているからだというお話は、
私たち建築士がもっとしっかりするべき、という叱咤激励に聞こえました。

 後半は女性委員と福和先生による対談となりました。
パネリストは、女性委員から、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の現地へ行きボランティア活動の経験もある下村さんと、女性委員会で長い間、防災セミナーの開催を担当してきた池田が務めました。

 コロナ禍を経験した今、災害に対する備え、心構えはどのように変化していくべきか、
7月に発生した九州での災害を参考にしながら意見交換を行いました。

 セミナー後のアンケートでは、
「女性委員会の10年間の防災セミナーの活動について刺激を受けました。」
といった一般参加の方のご意見を頂き、オンラインとなったおかげでいつもより広く防災の周知ができて良かったと思いました。

対談福和先生.jpg  福和先生

ウェビナーのパネリスト.jpeg ZOOMウェビナーを使ったセミナー
福和先生とパネリストとの対談

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2021年02月01日

近代建築勉強会「南山寿荘・南山学園ライネルス館・カトリック南山教会聖堂を巡る」に参加して 大坪一子

 令和2年度の見学研修は、
part1座学編(10/9)では見学建物の背景を知り、
part2実地編(11/5)で実際に建物を自分の目で眺め、
五感で感じて、多くの発見がありました。

新型コロナウイルス感染の予防対策として、座学はzoomのオンライン配信(参加者28名)で、
瀬口哲夫氏(名古屋市立大学名誉教授・工学博士)の講義を拝聴しました。
実地編は南山寿荘(なんざんじゅそう)において、参加者20名を、
1班・2班と半分に分け、見学時間をずらす配慮がされていました(途中参加者1名、合計21名)。

 Part1座学編は、八事の観光開発について、現在は高級住宅地ですが、
それには理由があるということでした。
中心人物は、愛知郡長を務めた笹原辰太郎で、開発が実行に移されたのは、
大正12(1923)年の八事耕地整理組合設立からでした。
組合長は後藤幸三、副組合長は笹原辰太郎でした。
大正14(1925)年、南山耕地整理組合が設立認可を受けました。
区画整理としては、八事土地区画整理組合(大正14年)、
音聞山(おとききやま)土地区画整理組合(昭和2年)がありました。
これらの2つの耕地整理組合と2つの区画整理組合からなる開発面積は、約400町歩(120万坪)。
八事山の風光を生かし、道路も直線ではなく地形に沿って屈曲しており、
大きな邸宅が建ってきました。
風致地区を指定することで、地域の自然美の維持・保全が可能になるという瀬口先生の言葉が強く心に残りました。

 Part2実地編の最初は「南山寿荘(なんざんじゅそう)」見学です。
この建物は、昭和美術館(昭和53年)を開館した後藤幸三の住まいでした。
もとは江戸時代末期・天保3(1832)年に尾張藩家老、渡辺規綱(わたなべのりつな)の別邸として熱田区堀川端に建てられていましたが、
昭和11(1936)年に現在地に移築し、間取りの一部変更などを行い、住み易くしました。

 まず、玄関を入った応接間は、元来、懐石料理を整える台所であった場所を、
飛騨高山古民家の部材を使って変更した民芸風の造りです。
1階茶席は「捻駕籠(ねじかご)の席」と呼ばれ、移築前の堀川端では高い柱で傾斜地に建っていて、
茶席部が浮いているように見え、さらに川に沿ってねじった間取りでしたが、
その姿を再現していました。

南山寿荘外観.jpg 南山寿荘外観

特徴として、普通は露地に設ける「腰掛待合」が、建物内部にあること。
また、にじり口に至る廊下は窓が大きく屋外を感じさせる露地の役割を持たせていること。
茶室内の床に向かって左手柱は上部30cmを残し切ってあり、
袖壁がなく、空間の広がりを演出していました。四畳中板入りの席で、
床前の1畳部は貴賓客用として天井を区切り、竹材の網代天井とし、
にじり口に近い2畳は一般客用で化粧屋根裏仕上、点前座1畳は天井を下げ、萩の簾天井(すだれてんじょう)でした。

 2階の広間は、武家の書院造で、9畳・10畳の続き間・水屋があり、
南の縁側から見える庭園は、枯流(かれながれ)を造り、池へとつなげた水辺の風情でした。
武家茶人で知られた渡辺規綱の茶名は又日庵(ゆうじつあん)と号し、実弟は裏千家11代家元玄々斎(げんげんさい)でした。
欄間の扇面のデザイン等に関わり、襖の引手は裏千家の替え紋である「つぼつぼ」を
模範にしていました。水屋の天袋の板戸は、後藤氏によるもので、
木目を生かして山脈を表現するなど意匠へのこだわりを感じました。

南山寿荘・2階広間の扇面デザイン欄間.jpg 南山寿荘・2階広間の扇面デザイン欄間

 その後は南山学園講堂・南山学園ライネルス館・南山学園ピオ十一世館・カトリック南山教会聖堂の見学をしました。
南山学園ライネルス館の設計者はマックス・ヒンデルで、昭和7(1932)年に竣工、
学園最初の中学校校舎本館でした。
道路に面して南正面を向け、北側背面にはグランドを設けたRC造3階建。
南面玄関上部の水平庇を4本の円柱で支え、外壁は黄土色の人造石仕上、
パラペットには山形の切込みを取り、窓が整然と並ぶシンプルな建物でした。
内部は約1.4m高さまで床と同じ色合いの濃茶色の腰羽目板張り、
壁上部と天井は白漆喰塗りと落ち着いた造形でした。
校舎群は用途の変更等で、増改築や新築をしましたが、
デザインは最初の意匠を継承し、新しい要素を付け足すという手法がとられ、
全体の建築群は統一性がありました。
これらの建築探訪では設計を学ぶ基本である、すばらしい建築を見ることができ、
とても感動しました。

南山学園ピオ十一世館.JPG 南山学園ピオ十一世館


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2020年12月01日

令和2年度講習会1「空き家対策勉強会」の報告    谷村留都

今年度は建築士会に限らず、多くの行事は激変した。
地域のイベントも建築業界全体の行事も相次いで中止になるなか、
女性委員会では初の試みとしてオンライン講習会を9月15日に開催することになった。

2020-09-15 (2).png

これまでも防災やまちづくりなど社会問題となっているテーマでの研修会を継続しているが、
今回は社会現象になっている空き家問題を取り上げた。
12月には不動産アドバイザーとして活躍中の吉田貴彦先生を講師に迎えての講習会を予定しているが、
その前哨戦として、不動産関連の仕事をしている女性委員会の近藤美夏さんを講師に、
空き家対策勉強会と称して空き家の現状を話してもらった。

 テレビ、新聞などの報道で全国の空き家は約840万戸といわれているが、
これは賃貸物件や売却物件の待機中のもの、別荘などすべてを含めた数値である。
住み手不在で空き家状態になっている家は空き家の分類の中では「その他住宅」と称され、
これは約340万戸である。
全国の県別の数値を見ると大都市周辺は低いが、
西日本中心に高い傾向がある。
「その他住宅」の中には利活用が困難な物件も多く、
改修したりして不動産市場に乗せられるものは全国で48万戸、
全体の15%である。
空き家ができる原因はさまざまであるが、
農村部では農地を切り売りして部分的に宅地化が進み、
また都市部では利用できない空き家が散らばり、
いずれの地域でも住宅の点在の仕方がスポンジ状になっている。
こういう状態ではインフラ整備も追いつかなくなり、
高齢化と合わせて今後さらに問題化する。

 国交省など国はさまざまなタイプの空き家に対して対策支援メニューを打ち出している。
空き家の再生や解体、空き家バンクの構築、住宅のセーフティネット制度、
建築基準法の一部改正、譲渡所得の特別控除等々10項目以上にも及ぶ制度の概要説明があった。
一度聞いただけでは理解できないので、
今回の講習を基に、心当たりがある施策をもう少しよく見ていこうと思う。

 最後の意見交換会では、高蔵寺ニュータウンの団地の改修事例があげられ、
思いがけない問い合わせが多かったという紹介や、
講師の近藤さんの身内所有空き家の活用例の紹介もあった。
これらを見るに、空き家の中には十分不動産市場で活用できるものもあるが、
多くは経済性というよりは人助け的な、
もったいないから使おうという事例のほうが多い。
住宅産業的には旨味のないケースであっても、
防災的なメリットや所得の厳しい人の助けになるというボランテイア的な要素もあり、
それらはお金に換算できない利活用ともいえる。
住宅の設計を生業としている我々は、設計した住宅がいずれ空き家になることも考えつつ、
汎用性のある、長く活用できる住宅の設計に関わりたいと思う。
posted by afa at 14:36| 活動報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする