令和3年10月22日に行われました令和3年度の女性委員会の講習会は、
昨年に引き続き「空き家対策」をテーマに金城学院大学教授の加藤悠介先生をお迎えして
「空き家の活用講習会」を行いました。
学生や県外からの参加者も含め32名の参加がありました。
加藤悠介先生は建築計画をご専門にし、
その中でも10年ほど前からは空き家の福祉転用を研究、計画されています。
今回は著書『福祉転用による建築・地域のリノベーション』をもとに、
福祉転用とは単純に建物を転用するというだけでなく、
その後地域でどのように影響を与えるのか、
まちづくりにどのように接続していくのかをお話しいただきました。
現在、既存建物は一用途、一建物、一寿命が前提で計画されており、
福祉転用に際しては複雑な連携(福祉事業者・設計士・所有者・地域住民など)が必要で、
法的規制をはじめ様々な障害を乗り越えて実現されています。
空き家数の増加により、「つくる時代」から「つかう時代」へ意識が変化し、
リノベーションやDIYなどの言葉も多く使われるようになりました。
・1990年代に集団ケアの時代から地域に住み続けられるように様々な福祉実践(宅老所)が行われる。
・2000年介護保険制度や障害者自立支援法の施行により介護の多様化による民家改修型施設の普及が始まる。
・2006年地域包括ケアシステムの導入により「ケアが必要になっても地域で暮らし続ける」ための環境の整備が行われる。
・2010年代地域包括ケアシステムが進んでいき様々な人への住宅確保と居住支援が進むと、
共生できる社会が重視され、コミュニケーションの見直しが重要になってくる。
みんなの場・子供食堂・コミュニティカフェづくりが始まる。
(みんなの場は行政から言われて動くのではなく、地域の人が中心に地域に対して何ができるのかを考えて作り出していくもの。)
という、福祉を取り巻く環境の変化を勉強しました。
そして、「福祉転用でみんなの場をつくるための心構え」として
1 .「福祉」を再定義する。
福祉の対象を困っている人、弱者のためだけでなく、みんなのためとして共有資源をつくる。
2.創意工夫して空間をつくる。
用途以外の創意工夫ができるような余裕を持った計画をする。インテリアにコストをかける。
3.地域を経営する。
過度に行政に頼らないで、自分たちで町をつくることが持続するまちづくりを実現する。
4.ケアがある日常風景をつくる。
みんなの場の実例をもとにそれぞれ詳しく分かりやすい説明がありました。
高齢化率29%、65歳以上の7人に1人が認知症の社会の中、
老老介護や介護疲れや孤独死といった暗いニュースが多くあります。
しかし、今回加藤先生のお話を聞き、すべての人が共存できる、
これからのまちづくりが「みんなの力」で実現しつつあるのだと実感しました。
どの実例も楽しく夢のある空間で、そのような居場所が地域に根付けば、
社会的弱者も明るく楽しく暮らすことができると思いました。