「第30回全国女性建築士連絡協議会福岡大会」が開催されました。
昨年はコロナ禍により開催が中止となりましたが、
なかなか収束の兆しがみえない中、今年は全建女初のオンラインにて開催されることとなりました。
愛知県からは8名が参加しました。
今年のテーマは、
「未来へつなぐ居住環境づくり〜建築空間を支える木の文化木挽棟梁のモノサシ〜」。
例年は2日間に分けて行われている全建女ですが、今年は1日がかりでの開催となりました。
午前中に分科会、午後から開会式・被災地報告・基調講演・全体会と、
例年とは違うプログラム構成で行われました。
午前中の分科会では、私は第4分科会に参加させていただきました。
前半は「森林で自立する村づくりと熊本復興支援」、後半は「空き家見えるカルテ」がテーマでした。
分科会前半では、熊本県南部に位置する五木村という小さな村での活動について、
お話を伺いました。総面積の94%が森林に覆われている五木村の森林資源を村づくりに活用することで、地域活性化と所得向上を促していくという明確なビジョンのもとに活動されている事例です。
人・自然・地域のすべてがごきげんになる世界を作りたいという想いで誕生した、
五木村の木を利用した“五木源(ごきげん)住宅”の建築をされており、
熊本地震の際には復興支援にも携わられ、現在も精力的に活動を続けられています。
元々は地域振興からはじまった活動が、災害時の支援活動にうまく繋げることができたとのことでした。
活動をはじめられた当初から、建築関係者との横のつながりや地域とのつながりを積極的に構築されており、
そういったコミュニティ作りが災害時の迅速な支援活動に繋がっていったことからも、
私たち建築士が日頃から地域等と積極的につながりをもっていくことがいかに大切であるかを考えさせられました。
分科会後半では、住宅インスペクションについてのお話を伺いました。
既存のインスペクションの劣化評価のみでは、建物の本当の資産価値は表示しにくいことから、
耐震性・省エネ性能・環境等のチェック項目を増やし、
安全や居住性も表示できるように作られたのが、
“ 空き家見えるカルテ”
だそうです。売主や買主にとって活用が難しい既存のインスペクションを、
見えるカルテでは視覚的に建物の性能を表示し、
見える化をすることで活用しやすいように工夫をされています。
建築を専門としていない一般の方にも容易に理解できるようなインスペクションが、
全国的に普及していくと良いなと思いました。
午後からは開会式が行われ、はじめに被災地報告がありました。
東日本大震災で被害の大きかった福島県・宮城県の被災地報告では、
復興は進められているものの、震災から10年が経過した今でもまだまだ多くの課題が残っており、
被害の甚大さを改めて感じさせられました。
長野県と千葉県からは2019年の台風による被害内容・復興状況の報告、
熊本県からは2020年の豪雨災害支援活動報告がありました。
近年は、災害発生が予測しにくい台風による被害や局地的豪雨も増えていますが、
水害による防災対策はまだまだ遅れているように思います。
地震だけでなく、火災や風水害等、災害には大変多くの種類があります。
起こりうる様々な災害に対しての防災・減災対策を日頃から行っていくことの重要性を、改めて強く感じました。
被災地報告の後は、有限会社杉岡製材所代表取締役杉岡世邦氏による、
「建築空間を支える木の文化〜木挽棟梁のモノサシ」
の基調講演が行われました。
九州北部豪雨での流木被害について・森林の歴史について・建築に使用する木材について等、
非常に幅広いお話を伺うことができました。
木材についての様々な知識をしっかり持ち、建築に正しく使用できるかどうかで、
出来上がる建築物の質はかなり大きく変わります。
木造建築を設計する際は、杉岡氏のような木の職人と、私たち建築士が設計段階から協働し、
共に建物を作り上げることができたら大変素敵だと思います。
各分野の専門家が協働し、共に協力し合いながらより良い建築を作り上げていくというあり方が、
今後は一般的になっていくと良いなと感じました。
今回はコロナ禍により参加者の皆さんと直接顔を合わせて交流することができず、
楽しみにしていた福岡に直接足を運ぶこともできませんでしたが、
連合会や九州の建築士会の方々のおかげで、オンラインでも大変充実した1日を過ごすことができました。
例年よりも参加者が4割程多かったとのことで、
どこからでも気軽に参加可能なオンラインだからこそ、
普段なかなか参加が難しかった方も参加できたというメリットがあったのではないかと思います。
オンラインの便利さを感じながらも、直接顔を合わせて交流できていたことの有難さも同時に感じた一日でした。
来年の開催地は東京です。また皆さんと直接お会いして交流できる日が戻ってくることを楽しみにしたいと思います。