女性委員会の令和2年度講習会は空き家対策がテーマです。
9月に不動産事業も手掛けている委員を講師として、
現状や制度についての勉強会をしました。
第2弾となる今回は(株)住宅相談センター代表取締役であり、
お客様側に立った住宅・不動産のアドバイスを行っている吉田貴彦氏を
講師にお迎えし、12月4日に開催しました。
新型コロナ感染防止を考えてオンラインのみでの開催としましたが、
24名の方にご参加いただき、県外の建築士会会員の方もいらっしゃいました。
そもそもなぜ空き家が増えているのか、この問いに多くの人が
「人口が減少しているから」
と答えるそうですが、それは
間違いだそうです。
人口が減りだした頃はまだ空き家は増加しておらず、
「高齢化+単世帯の増加」が空き家を増やしているとのことです。
子供が結婚して新しい世帯ができた時、親と同居するという選択をする人はごくわずかです。
そうなると当然高齢者となった親だけが住むことになり、
その後施設に入所したり亡くなれば空き家になります。
子供が近くに住んでいればまだ空き家の状況を目にするので、
手入れをしたり対策を講じたりする確率も高いですが、
遠方に住んでいる場合、多くはほったらかしの空き家になります。
家を継ぐという価値観が薄くなり、自分たちの住みたいところに住む、
という価値観が一般的になったことが空き家を増やしているように思います。
高齢者の単世帯というのが空き家予備軍なのですが、
名古屋市中村区、千種区がその空き家予備軍が多いそうです。
都会なので意外ですが、高齢者が多いと聞いてなるほどと思いました。
古くから人が多く住むところは高齢者が多くなります。
これはどの地域でも同じなのではないでしょうか。
空き家が増えたとしてもそれが活用されればいいのですが、
活用されるに至るまでに解決しなければならない問題が様々あります。
「相続未登記、所有者が認知症で行為能力なし、共有者の意見の不一致、所有者不明、遠隔地所有者」
これらの問題が圧倒的に多く、「どう活用するか」という段階にあがるまでに
いくつものハードルを越えなければなりません。
建築士の出番となるのはおそらく「どう活用するか」の段階で、
リノベーション事例が増えたといっても、それでは空き家問題の解決にはなりません。
建築士としては出番がないようでもどかしさを感じますが。
住宅に関わる者としてどこへいけば相談できるか、
解決する方法はどういうものがあるか、
情報発信することによって空き家を相続する人への注意喚起になるのではと思います。
私は住宅の新築が主な仕事なのですが、空き家が増えているという社会にあって新築を増やしていることに心の片隅で疑問を感じることもあります。
建築士として長持ちする住宅をつくっても、
住人が「長持ち」しないというのが今の社会です。
質のいい住宅をつくる、それが世代を超えて流通する、
そういう社会になるには長い道のりだなと思うと同時に、
自分自身の実家を将来どうするかということを考えなければと実感しています。