私は4年前に建築士と社会福祉士として、福祉用具貸与事業所と建築士事務所を立ち上げました。主な仕事は、介護保険で定められた福祉用具貸与(特殊寝台や車いすなどの13品目)、と、特定福祉用具販売(ポータブルトイレや入浴補助用具などの5品目)、防水シーツや靴などの福祉用具販売、住宅改修(手すりの取付や段差解消などの7項目)です。ケアマネージャーがいる居宅介護支援事業所から要支援者や要介護者を紹介してもらい、レンタルや販売、住宅改修を行っています。
現在は、介護保険や医療保険の充実により、疾病を負っても在宅での生活が続けられる環境が整いつつあるため、在宅の高齢者は増加傾向にあります。内閣府の調査によると、自宅で最期を迎えたい高齢者は半数を超えています(高齢者の健康に関する意識調査 内閣府H24)。同様に自宅で介護を受けたい人も、男性で42.2%、女性で30.2%と日常生活を送る上で介護が必要になった場合にも在宅生活を続けたい人が多くなっています。
脳梗塞などの突然の疾病により入院し、急性期が終わると、本格的なリハビリが行われ、退院の目途が立った時点で、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などと自宅の改造提案(退院前カンファレンス)が行われます。自宅に手すりを付けたり、段差解消をしたり、就寝場所の変更をしたりすることで、要介護の状態である人の在宅生活が安全安心に続けられるための提案です。
私は、福祉用具屋として、また住宅改修の施工業者としてその場に呼ばれ、PTやOT、ケアマネとともに様々な意見交換をします。例えばPTが提案したいトイレの手すりの位置には、胴縁がないから手すりはつかないとか、この壁は扉に変更できるとか、建築士だからこそわかる構造上の問題が、その場で解決できることを重宝がられます。動線を考慮した手すりを提案したり、梁のちり分を計算し前出を大きく調整した階段手すりとしたり、玄関框の踏み面と蹴上げを計算し適切な段差解消をしたりするなどの細かな心遣いが、従来の住宅改修にはない良いものができると、利用者やケアマネ等に喜ばれています。
最近は、建具の建付けが悪くなったことやドアノブの交換などの小さなことから、来客時に玄関ドアを開けに行けない悩みや、トイレを寝室近くにつくりたいとのレイアウト変更など、様々な相談を利用者やケアマネから受けるようになりました。
介護や医療のエキスパートと、建築のエキスパートが利用者にチームアプローチを行うことにより、利用者の安全安心な環境整備だけではなく、ケアマネやPT・OTの仕事効率の向上にも役立っていると思っています。